平成19年2月に行われた舞鶴市長選挙戦での齋藤市長の公約は「舞鶴地区の医療再編を行う」では無く、「舞鶴市民病院を再建する」であり、その方策について舞鶴医師会に相談を持ちかけたが、医師会としては、舞鶴市民病院の再建は舞鶴市の問題であり、齋藤市長自身が解決すべきであると回答した。すなわち、当時の舞鶴市は市民病院の運営には困っていたが、舞鶴市民は市内の医療体制において困っていなかったのが現状であった。
そういった中で、将来的に発生する可能性の高い医療問題について、舞鶴地域医療あり方検討委員会が発足し、一般論(理想論)として纏めあげられたのが、
『将来的に舞鶴市内の病院を1ないし2病院に再編し、ひとつの運営組織で管理し、その適正病床数は約700床である』との結論であった。
この答申の中には「舞鶴市民病院の再建」についての記載は無く、
『再編案が完成するまでは、舞鶴市民病院は救急医療の手助けをする病院として引き続き運営する』との文言が齋藤市長の要請で追加された訳である。その答申を1年以上放置した後に、唐突にも4つの病院を1つにするとの極めて乱暴な結論を提示した。当初より、誰もが経営母体が異なる4つの病院を短期間に一つに出来るはずが無いと指摘し、その現実は今も変わり無い状態である。
自民党政権から民主党政権に移行する直前に決定した100億円の地域医療再生基金を利用して、この地域の医療再編を早急に行おうとしたものである。これは医療現場の意見を全く聞かず、かつ、医療の本質を全く分からない方の独裁的な考えである。案の定、舞鶴共済病院の職員および上部団体は反対し、また、舞鶴赤十字病院の職員も反対したのは当然のことである。しかし、反対するものはすべて悪であるとの行政側からのアナウンスは、どれだけ医療人の心を傷つけたのかを理解していない。ご承知のごとく、勤務医、看護師およびコメディカルのスタッフは奉仕と犠牲心を持って働いており、これらの人達に信頼と感謝の念を持たねば、舞鶴の医療は根本的に崩壊すると思う。
舞鶴共済病院が参加しないため、3病院での再編に変更となったが、2ヶ月ほど前(舞鶴市議会9月定例議会での市長答弁)に
『舞鶴医療センターの敷地内に400床規模の2.5次(こんな定義はありません)救急を担う病院を建設し、舞鶴市民病院を新しくできる病院に吸収する』と発表した(平成21年4月に、4病院を1つに、その後3病院を1つに、そして、今回は2病院を1つに再編と変化し、その方針には全く理念が無い)。そして、次の市長選挙に備えて、舞鶴赤十字病院は西の連携拠点病院として、そのまま継続して運営すると発表した(しかし、本音は、舞鶴赤十字病院は外来機能だけにする構想である)。
舞鶴医療センターはもともと395床の急性期病床を有していたが、その病床規模は徐々に縮小し、現時点では300床以下の運用となっている。従って、400床規模の病院が健全に運営できるには、医師、看護師の補充と100床以上の病床を満たす患者さんが必要となる。舞鶴医療センター内に新設される病院の計画に医師補充が必要との認識があり、京都府および京都府立医科大学に依頼してあるとのことであるが、昨今の若い医師のマインドと医局の力からは、新たに京都市内から20〜30人の医師が確保できるとはとても思えない。従って、舞鶴市内における医師、看護師そして患者さんの獲得競争が始まる。そして、いずれの病院もその経営は成り立たなくなり、舞鶴医療センター内に約100億円もの資金を投入した新病院はまさに箱物となり、毎年の運営に必要な補填は現在の舞鶴市民病院の数倍にも達することが推測され、税金の大きな無駄が持続し、かつ、この地域の市民は適切な医療を受けることができず、路頭に迷うことが十二分に想像できる。
舞鶴市民病院は専門外来と療養病床の機能を併せ持つ世にも奇妙な病院であり、病院運営の知識が無いことを如実に物語っている。この奇妙な病院機能を舞鶴医療センター内の新病院に移行するとの発表は、次の市長選挙での責任逃れをする作戦に他ならない。